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20250504

オーラバトラー戦記

 今更ですが、1986年から掲載された富野由悠季さんの小説「オーラバトラー戦記」を読み終えました。(市立図書館で借りました)

 1983年に放送された「聖戦士ダンバイン」は低年齢層も観るテレビ作品であり、スポンサーや雑誌媒体への配慮に加え本編の製作時間にも追われていたでしょうから、富野さんが真に描きたい物語ではなかったと思います。

ですから真・ダンバインとも言える本作を読んでみようと思った訳ではありますが、とにかく読みにくい作品でありました。

 ダンバインと同じ登場人物、ざっくりとした世界観は承知していたものの、新しく出てくる名称が人物なのか地名なのか、わかり辛い。

そして筆がノッて気持ちが急いちゃったのか、特に空中戦での描写がさっぱりわからないし人物の描写の間に筆者の思想が書かれてたりするので読み辛いこと、この上ありません。

 ご存知の通り80年代のロボットプロレスブームを牽引したトップランナーであり、多くの視聴者を魅了する世界を構築された富野さんですが、文章を書き起こすのはもっと上手い方に頼んだ方が良かったのでは…。でも、むかし読んだ「機動戦士ガンダム」は読み辛いことは全く無かったので、やはり固有名詞の問題が大きかったと思われます。

 世界観は中世ヨーロッパで、ネットで言われるほどのエログロ描写とは感じません。むしろ現在のマンガやテレビアニメの方がよっぽどエゲツなくて、「ゲーム・オブ・スローンズ」あたりの映像観が近いでしょうか。


 さて、読み辛い作品ではありますが、オーラバトラーの構造に関する発想は流石でありました。

 基本的にはダンバインと同じですが、全高はテレビより大きいガンダムサイズ(これは大きすぎてテレビの方が好き)、オーラマシンはあれど細部のテクノロジーはまだまだで、強獣の視神経を使ったコクピットのモニターはブラウン管初期の解像度(みたい)。無線は鉱石を使った感度の悪いものだし、電球もようやく浸透した程度です。オーバーとローテクの混在がなんとも心地よいです。

 最初期の人型オーラマシン カットグラ。挿絵のイメージで。

オーラファイター ハインガット。アの国製造でビランビーぽく。
 ハインガットはオーラバッテリーを搭載した強化量産型。
初期より工夫された武器は…
「フレイ・ランチャー」。液体燃料を気化した炎の弾を30発程度、または液体そのまのの火柱を発射可能。手持ちから腕の外側に取り付ける仕様になり、おおよその狙いを定める丸型照準装置付き。内側レバーを引けばすぐに外して捨てることが可能。
「シールド」。防ぐのが目的なので強獣の外殻を切り取って整形しただけだが、表面に耐炎処理(漆喰みたいなやつ)を施し、近接用のナイフに加えロケット弾を装備…でもまんまロケット花火で正確な照準は不可。とはいえ地上界ならば1km四方を焼き払う威力あり。
その他、爆雷や上腕に固定装備されたツメなど。
 オーラバトラーは主に強獣の外殻や筋肉を使用して製造されているが、強度が必要でキッチリした寸法の部品が必要な関節や刃物には鋳物や鍛冶職人の手による金属部品が使われている。コモン界の金属は強獣の外殻よりも強度があるが、重量が嵩み製造日数が掛かるため、必要最低限の使用に留めている。
 そして権力の象徴であったためカービングや彫金で豪華に飾られていたカットグラに対し、ハインガットは量産を重ねる度、装飾を施されることは無くなっていった。(ちなみに装飾は墜落した場合の資金にも転用可能。)
 またこれ以外にも様々なオーラバトラーが登場するが、カットグラの設計構造がベースとなっているため形状の違いはあまり無い。ただし秘伝の加工方法は流出させていないため、他国のオーラバトラーがアの国製造機種より性能が勝ることは(基本的には)無い。
…なんて感じでしょうか。妄想が膨らむ素材を産み出した富野さんには本当に脱帽です。

 そしてテレビでは敵役だった人物たちの描写が興味深いです。
ドレイク・ルフトは家族想いで思慮深い王様で、ガロウ・ランの侵攻からコモン界を守る戦争に打ち勝った後、それが次第に支配欲に変わっていく人間臭さ。またバーン・バニングスやガラリアも最後まで騎士らしく立派であり、ショット・ウェポンもテレビのような子供っぽい野心がある感じではありません。
 どちらかと言えば最後のあたりもフワフワしてた主人公のジョクよりも、魅力的に描かれていました。

 巻数で言うとまるっきしファンタジーの1・2巻はオーラマシンもテレビで言うドロしか登場しないので、3巻以降、地上界のあたりが面白かったです。

読み難い物語ではありましたが、機会があればもう一度手に取っても良い作品でありました。

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